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上杉鷹山公の精神に触れるー3 [上杉鷹山]

(以下引用の続き開始)

農民への愛情

 農民の生活をよくする為には、日頃農民に接する藩役人のあり方を改めることが根本であった。というのもこれら役人の主な任務は農民から確実に年貢を取り立てることであり、彼らは農民に対し生殺与奪の権を握り、従来とかく百姓泣かせの苛斂誅求(かれんちゅうきゅう:きびしいとりたて)を行うものが少なくなかったからである。

 そこで鷹山はこの農民を支配する役人の制度を改め、これまでの世襲的な代官制度を撤廃し、すぐれた人物を選びこれにあてることにした。そして鷹山はこれら役人の心構えについての文章を与え、彼らを懇々と教え論した。その文章を要約すると、「役人は母の赤子に対する心をもって民にのぞめ。この真心、誠のあるところ愛を生じ、愛は知を生ずる」ということである。この言葉は、鷹山の肺肝よりほとばしり出たものである。鷹山の心にあるもの、それはひたすら民を思い民を愛する至情であった。鷹山のこの民に対する姿勢こそ、今日においても少しも変わることのない政治の要諦でなければならない。

農民の教師-郷村教導出役

 鷹山は藩内十二の地方に、前述の基本精神のもとに、「郷村教導出役」という役人をおいた。鷹山が彼らに与えた任務は次の通りである。

1.天道を敬うことを教える事

1.父母への孝行を教える事

1.家内睦まじく親類親しむことを教える事

1.頼りなき者をいたわって渡世させる事

1.民の害を除き民の潤益をとり行う事

1.上に立ち百姓を取扱う諸役人の邪正に注意する事

1.往来の病人をいたわる事

 郷村教導出役 の任務は一つに農民の生活を守ることであり、いま一つは農民に人の道を教え人倫を正しく践むましめることであった。

 鷹山の抜擢をうけた十二人はいずれも衆にすぐれた人物で、彼らはよく鷹山の意を体し競い合って職務に精励した。鷹山はしばしばこの十二人を呼び出しては、直接彼らと語り合い農政の改善に全力を尽くしたのである。こうして米沢藩農政は着々とその成果をあげ、農民の生活は向上していった。かくまでして農政に心を傾け尽くした君主は、ほとんど稀であったのである。

 この鷹山の農政を見て人々は何を感ずるであろうか。鷹山は政治と道徳あるいは教化をわけていないのである。鷹山は政治と道徳を不可分と信じたのだ。それ故に農民の生活安定並びに向上のみならず、彼らに人間としての道を行わしめることに最も意を注いだのである。鷹山は役人たちに、為政者たる役割と教師たる役割を二つながら備わることを求めたのであった。

 ここに我々は本当の政治と政治家のあり方を見ることができる。政治はまず人々の生活を守ることが大前提であり、これができなければ失格である。鷹山はこのことにあらゆる叡知と努力を傾け遂にそれを達成した。しかし人々の生活を守るだけが政治の全てではない。人間としてよりよく立派に生きることこそ真に大切なことである。本当の政治はやはりこの課題を無視して通れない。鷹山はこの政治の最終目標を忘れなかったのである。このことを考えてみても鷹山が為政者としていかにすぐれていたかがわかるのである。
(続く…)

 「為政者は、民の父母であるという心構えを第一とせよ」、春日神社に奉納した誓詞であります。鷹山公の心にあったものは、ひたすら民を思い、民を愛する至情でありました。そこには自分というものがありません。鷹山公の政治を一言で表現すれば、「愛の政治」であったと言えるように思います。

 また、鷹山公は、代官の世襲制度を廃止して、新たに登用した役人に心構えを諭しています
 「役人は母の赤子に対する心をもって民にのぞめ。この真心、誠のあるところ愛を生じ、愛は知を生ずる」。官僚の人たちには、この言葉の意味するところをかみしめていただきたいものだと思います。

   郷土のやまがた 「上杉鷹山の生涯」
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コメント 2

mwainfo

天道を敬うことを教える事、時代を超えて教えてほしい。

by mwainfo (2009-01-16 17:47) 

ofil425

大学は、真理を追求するところと思っていましたが、そうではなかったですね。
本質と外れたことをしているような気がしないでもないです。
by ofil425 (2009-01-16 22:04) 

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