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ワーキングプーアのルポルタージュ [社会問題]

細切れ雇用の果て 39歳、全財産100円
2008年04月30日asahi.comより

 「恥ずかしながら、これが私の全財産でして」

 4月15日夜、東京・飯田橋近くのNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」。男性(39)は財布の中身を見せて、うなだれた。

 財布には小銭ばかりで100円ほど。前日に古本屋で本を売った400円の残りだ。飯田橋までの電車賃もぎりぎりだった。

 都内の電気工事会社の下請けで働くこの男性は、生活困窮者を支援する「もやい」に助けを求めていた。

 「いつお金が入りますか」

 「4月18日です」

 「いくらぐらい?」

 「たぶん、3万~4万円」

 「その額でいつまで」

 「次の給料日は5月20日」

 「それじゃあ、苦しいですねえ。どうしますか」

 「18日までしのげれば、アルバイトでなんとか……」

 1万円を工面してもらい、米5キロと缶詰5個をもらってしのぐことになった。両親は年金暮らしで頼れない。

 「本当にお恥ずかしい。仕事を探しながら働く繰り返しで、失業保険も貯金もないものですから……」。何度も頭を下げてはお礼を言った。

     ◇

 男性は99年、都内の私立大学を卒業した。浪人と留年を重ね、このとき30歳。就職氷河期まっただ中だった。

 派遣労働者として働きながら、就職活動を続けたが決まらない。派遣会社10社以上に登録し、契約が切れると清掃業務や建設作業などで食いつないだ。たまに採用されても契約社員扱い。細切れ雇用の全部は本人も思い出せない。

 そのうち面接で「どうして職をそんなに転々としているのか」と聞かれるようになった。これまで60社以上の面接を受けたが、正社員への壁は高くなるばかりだ。

 いまは工事で余った廃材の片づけなどをする仕事。正社員を希望したが、半年間の契約社員。日給1万円、翌月払いだ。3月下旬に入社し、3月は5日間働いた。

 ところが、4月18日の給料日、3月分の給与明細を見てがくぜんとした。手取りはたったの2万1814円。健康保険料9456円、厚生年金保険料1万7995円、雇用保険料735円が天引きされていた。

 これでは家賃3万200円にも足りない。日雇い派遣大手のフルキャストを通じ、夜も仕事を始めた。

 午後5時に仕事が終わると、すぐ派遣先の倉庫へ。6時半から10時まで、ベルトコンベヤーに追われながら荷物の積み込み作業。時給は1千円。一晩で3500円にしかならない。

 くたくたでアパートに帰る。倉庫の仕事を始めた初日、1回430円の銭湯は高いのであきらめた。部屋は4畳半一間の風呂なし共同便所。布団はなく、2枚の毛布の間に入って眠る。

 2日続けたが、3日目に会社を休んだ。ダブルワークで疲れ切った。数少ない楽しみの携帯電話代1万1千円の支払期限で憂うつでもあった。翌日が、会社に昼の弁当代の3月分2千円を支払う日だったことも気分をめいらせた。

 翌朝。通勤途中、スーツ姿のサラリーマンたちが足早に彼を追い抜いていく。まもなく40歳になる。その数カ月後には、雇用契約の更新時期がまたやってくる。

 「やっぱり、私のような人間では駄目なんです。ピシッとスーツを着て、ライフステージを踏んできましたって胸を張れないと、正社員にはなれない。そういう厚い壁を感じてしまいます」

    ◇

 男性はたびたび、自分のことを「私のような人間」と呼んだ。まじめに働いても、30歳で大学を出たというだけで貧困から抜け出せない。広がる「ワーキングプア(働く貧困層)」。1年間働いても200万円以下しか収入がない人は、06年に1千万人を超えた。


 少し古い記事ですが、ワーキングプーア問題を一緒に考えていただきたいと思い、取り上げることにしました。
 この主人公は、意志の弱いところがあるが、気持ちのよい人なのではないでしょうか? 人を蹴落としてでもよい思いをしようというような自分中心的な考えがないのだと思います。 私も同類ですのでよくわかるのです。

 30歳新卒で社会に出ても、まともな就職先を見つけることはなかなか難しいです。最初は一時しのぎのつもりで入ったのでしょうが、派遣労働の呪縛にはまってしまったようです。派遣労働は、いつ首になるか分からない不安定な雇用形態ですので、結婚することも困難でしょうし、つぶしのきく技術を身につけることもできません。  

 派遣労働は、雇用主に一方的に有利になっているのです。さらに、人材派遣会社という寄生虫のような存在があって、派遣社員は搾取の対象でしかないのです。最後は、使い捨てにされて放り出されることになります。

 今の世の中では、若者が学校を卒業して社会に出た時点で、自分の人生の進むべき道がほとんど決まってしまっているといえるのではないでしょうか? ですので、在学しているあいだに、自分の人生設計を立てて、自分の人生に対して、自分で責任をとるという心構えが必要なんだろうと思います。 若者は、ある程度自分中心に、利己的にならなければならないということです。

 自分のことしか考えない人、利己的人間ほど偉くなって、お人好しの人、まじめな人ほど苦労するのは、社会が弱肉強食、強いもの勝ちになっていて、社会が歪んでいるからだと思います。 派遣労働は、弱いものから搾取し、強いものを富まさせる不公平な制度であり、社会の格差拡大を助長させるものといえると思います。

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