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田母神航空幕僚長の政府見解逸脱論文を考える [時事問題]

 田母神(たもがみ)俊雄・航空幕僚長が、民間会社が主催する懸賞論文に応募して最優秀賞を獲得しましたが、その内容が、「我が国が侵略国家だったというのは濡れ衣」などと主張するものであったものですから、政府見解を大きく逸脱するものであるとして、政府は即刻更迭する事態となってしまいました。

 懸賞論文を主催した民間会社というのは、ホテルチェーンなどを展開するアパグループであります。アパグループといえば、耐震偽装騒で問題になった会社でありますが、アパグールプの会長は、安倍晋三元首相の後援会である安晋会の副会長であったのを思い起こします。この懸賞論文は、第一回目で、課題は「真の近現代史観」となっていました。審査委員長は、皇国史観の渡部昇一氏であったそうです。役者がそろっていて、何か世論誘導の意図があったのではないかと疑ってしまいます。

 田母神論文は日中戦争について「中国政府から『日本の侵略』を執拗(しつよう)に追及されるが、我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者」と主張。旧満州、朝鮮半島について日本の植民地支配で「現地の人々は圧政から解放され、生活水準も格段に向上した」としている。
 日本の安全保障政策についても「集団的自衛権も行使できない。武器使用も制約が多く、攻撃的兵器の保有も禁止されている。(東京裁判の)マインドコントロールから解放されない限り我が国を自らの力で守る体制が完成しない」と、抜本的な転換を求める内容になっているようです。

 小泉政権以降、自公政権は、アメリカのテロとの戦いに協力するとして、憲法を無視して、イラクに自衛隊を派遣しました。さらに、在日米軍の再編によっって、自衛隊は米軍と一体となった軍事訓練なども行われるようになっています。日米安全保障条約は、日本を守ってもらうものから、米軍と自衛隊が一体になって共通の敵と戦うものへと変質していっているように思います。自衛隊の制服組は、日本の防衛ではなく、アメリカの戦争にも参加させられることが現実の問題として認識せざるを得なくなっているのではないでしょうか。

 小泉純一郎元首相は、国民にいっさい説明することなく、日米安保体制を、自衛隊が米軍の一翼を担うことになる憲法違反の体制に変質させてしまったのです。こうした国家体制の転換につながる決定を、国民の意思を無視して行った小泉純一郎氏は、売国政治家といわねばならないでしょう。憲法9条を改正することを先にやらなければならなかったのではないでしょうか? 後を継いだ、安倍晋三元首相が、憲法改正をめざしましたが、参議院選挙で挫折してしまいました。

 国民は、憲法9条の改正を拒否する方向に意志表示したように感じます。今は、憲法改正が政治課題にも挙がらなくなってしまいました。タカ派の麻生首相ですが、村山談話を踏襲(ふしゅうでありません)するとへたっています。自公政権は、現場の自衛隊にやらせていることと、政府の公の見解が違ってしまっているのです。言っていることとやっていることが違う、ダブルスタンダードになっているということです。

 田母神幕僚長は、日米軍事一体化がこれから進んで行く現状を鑑み、解釈改憲でもいいから、早く体制をつくってほしいという本音を述べたに過ぎないのです。防衛庁内部では、正論と受けとめられているのではないでしょうか?

 田母神発言が、文民統制(シビリアンコントロール)を崩壊させるものだといわれていますが、シビリアンコントロールをおかしくしているのは、小泉純一郎元首相以降の自公政権の方であり、与党政治家に一番の責任があるのだと思います。それだから、田母神幕僚長に対して、これまで強いことが言えなかったのではないでしょうか。

 国民は、憲法9条を改正することは望んでいないように思います。将来的にも、憲法改正は難しいのではないでしょうか。そうであれば、憲法改正を前提とした日米軍事一体化の従米路線は、これ以上進めていいはずがありません。いまさら、与党自民党の政治家たちは、従米路線を転換することなどできないでしょうから、これまでの安全保障政策の誤りを認め、政権放棄して、下野すべきであります。

 自公政権の日米軍事一体化の従米路線は破綻しているのです。日本は、憲法9条を基礎として、アメリカに偏らない等距離外交をめざすべきだと思います。新たな政権は、国民の意思として、米政権に、日米軍事一体化路線の解消を迫らなければなりません。それが実現すれば、自衛隊は、憲法9条のもと、専守防衛の軍隊に生まれ変わることができるでしょう。


航空幕僚長:政府見解逸脱論文、麻生政権にさらなる逆風(毎日新聞)

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田母神俊雄航空幕僚長が発表した論文(右)と、アパグルー
プが作成した冊子に載った受賞コメント(左)=防衛省で200
8年10月31日午後11時、丸山博撮影


 過去の戦争をめぐり政府見解を逸脱する論文を書いた田母神(たもがみ)俊雄・航空幕僚長の更迭により、世界的金融危機や景気悪化への対応に追われる麻生政権はさらなる逆風にさらされることになりそうだ。インド洋での給油活動を延長する新テロ対策特別措置法改正案の国会審議に影響するだけでなく、政権の歴史認識を問われる事態にもなりかねない。12月に予定される日中韓首脳会談のホスト役である麻生太郎首相にとって冷や水を浴びせられた形だ。

 毎日新聞記事全文
 http://kijihozon.blog.so-net.ne.jp/2008-11-01
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